2017年 04月 28日
石の道しるべを見るために御林峠へ
上野原駅ー用竹バス停ー墓村ー御林峠ー和見ー御林峠ー芦垣ー上野原駅
上野原駅前のバスターミナルでいつも活躍されてる富士急バスの案内係の方。
この前、見せてもらった一枚の写真、それにひどく興味をそそられた。
自然石でこしらえた古い道しるべの写真。
御林峠にあるという。
松姫峠行きのバスを降り、用竹の集落へはいる。
ここは、まだまだ春らんまんの真っ最中。
ウグイスの鳴き声も四方八方から聴こえている。
朝は9時、この時間、前夜に降った雨のしっとり感が大気にまだ残っている。
目の覚める明るい色がまぶしいくらいだ。
なんて気持ちいいんだろう。
今野の集落を抜け、つぎの墓村では黄色の光を放っていた。
花のプロムナードをひとり占めとは、なんと贅沢なこと。
集落を抜けると、あとは山道。
右に左にと折れながら登っていくが、勾配はゆるく歩きやすい。
途中、道のど真ん中に自然石で作られた馬頭観世音があった。
事前のネット下調べで、この存在を知っていたが、こうして実際に出会えるとやはりうれしい。
よーく見ると、この馬頭観世音、道しるべも兼ねていた。
この峠道を往き来していた人たちの姿が浮かんでくる。
馬はどんな荷物を運んでいたんだろう。
そんなことを考えながら歩くと、なんだかわくわくしてくる。
御林峠に着いた。
あれだあれだ!
富士急バスの案内の方に教えてもらった道しるべの石は、二本杉へ向かう登り口の脇にちょこんとたたずんでいた。
道しるべの文字を読みに、そばに近づいてみよう。
南 芦垣
北 大室山
東 棡原
西 和見
こう刻まれている。
この道しるべが作られたのはいつごろなんだろうか。
東西が峠道で、南北は尾根道。
墓村と和見をむすぶ峠道は古いものだとわかる。
尾根道の方も、こうして道しるべに示されてるのだから、おそらく昔からあるのだろうと思う。
そして大室山というのは、権現山のことか。
こんなふうに、いろいろと思いをめぐらすのは想像が広がって楽しい。
きょうの計画は、峠道を反対側の集落、和見へ行き、そこから再びここに戻り、そして芦垣へと尾根を下る。
Tの字を描くルートだ。
道しるべのほかに、もう一つの目的が和見の集落を訪れること。
和見のことをネット検索すると、ここを訪れにくる自転車でパスハンティングする人たちのブログが目立つ。
そしてみんながみんな、口々に山上集落の「和見は良いところ」とほめている。
期待感を持って、道幅の広い道へと進む。
林道のように整備されているが、軽トラくらいの幅しかなく、むしろ道幅の広い山道といったほうが正しいかもしれない。
なだらかに、なだらかに、ほんの少しずつ下るくらいのほぼ水平道。
よし、ここは、トレランもどきで走ってしまえ。
タッタカ、タッタカ。
うん?
ちょっとストップ!
小さな谷すじっぽいところにあるゴツゴツした岩の一部分だけが、なにかツルンとしているじゃないか。
そこだけが周囲と明らかに材質が異なるという印象だ。
なんだろう?
やや!馬頭観世音だ!
苔むした丸っこい石に、文字がそう彫られている。
予期もせずに、峠をはさんだこちら側でも、むかしの人々の生活をうかがえるものに出会えたということが、宝物を見つけたくらいの喜びを感じた。
そして樹林帯の林道からいきなりスコーンと和見の集落が正面にあらわれた。
おー!
評判どおりの美しい景観だ。
明るい南斜面に集落の家々が見える。
「わみ」とは谷あいという意味だと、上野原町誌に記述されているとおりの地形。
しかし狭っ苦しさは、まったくない。
空が広い。
草っ原に腰を下ろし、心地良い風景を眺めながら昼とした。
遠くには上野原の町のはずれも見えている。
ときおり頬をなでる風に春の香りを感じる。
小一時間もいただろうか。
さて峠へもどろう。
来た道を引き返す。
帰りでも、上り坂とは思えないほど楽ちんに歩ける。
芽吹いたばかりの新緑がみずみずしい。
タッタカとトレランもどきの往きと違って、帰りはのんびりのんびり歩いていく。
そうすると目に入る風景も変わってくる。
あれ?ちょっと待てよ。これは・・・
なにか人工的な感じが。
炭焼窯の跡かもしれない。
穴の奥をのぞいてみると、けっこう広い空間がひろがっている。
現金収入の山仕事として、ここでむかし、集落の人が炭を焼いていたのかもしれない。
出荷先は、宿場町として栄えていた上野原だったのだろうか。
先を歩くと、これと同じ造りの跡が近くにもう一つあることにも気づいた。
昔の暮らしぶりに思いをはせながら、朝から人っ子一人会わない静かな道を歩いていく。
そろそろ御林峠が近い。
そのとき!
ハイカーがぞろぞろと二本杉の方から出てきている場面に出くわした。
ちょうど昼時の時間、団体さんはここでランチタイムのようだ。
よく見ると、自転車を置いたサイクリストが一名。
さっきまで、一人で静かに休んでいたに違いない。
それが、あれよあれよという間に団体さんの集団に取り囲まれてしまったのだろう。
気の毒に・・・
私は、もう一度、石の道しるべを見たかったのだけど、おおぜいの人でごった返したありさまをみて、ここからすぐ離れることにした。
次の行程は、道しるべが示している南への道、芦垣へ。
こちらは尾根道をいく。
道も整っているし、起伏がなく、とても歩きやすい。
なだらかで快適だ。
なんの無理もなく、知らず知らず下っていく感じ。
右手には樹木越しに、さっき訪れてきた和見の集落が中腹に小さく望める。
周囲は明るく雰囲気が良い。
峠の道しるべにもあったとおり、ここも昔からあった古い道を思わせる。
なんだか、良い気がめぐってそう。
この尾根道がこんなにも素晴らしいとはまったく予想してなかった。
とっておきの穴場だ。
里が近づいてきた。
芦垣の集落は一本の長い道沿いに家々が整然と並んでいる。
振り返ってみよう。
用竹、和見、そして芦垣と、それぞれ趣きのある集落を結び、たくさんの古いものに出会えた山歩き。
心は満足感でいっぱいだ。
by nano-da
| 2017-04-28 19:30
| 中央線の山
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